先日のエントリーでも書いたように大渚山のツアーに行った。だが、翌日は生憎の雨だったので、ツアーを中止して早々に関西の方に引き上げることになった。せっかく時間があるのだからと、途中氷見のフィッシャーマンズワーフときときと寿司氷見本店に寄ることになった。
その後、まだ時間も早いので千里浜なぎさドライブウェイでもを走ってから帰ろうということになった。
もう何年前になるだろうか、この道をバイクで走ったのは…
俺はM1の秋に中型二輪の免許を取っていた。それから一年後、M2の秋に金沢で開かれる学会で生まれて初めて発表することになった。どうやっていこうと時刻表とにらめっこしていると、研究室の先輩に「そらバイクで行くべきやで」とそそのかされ、独りでバイクで行くことになった。愛車はXLX250。夏の志賀高原に続いて2回目のロングライド。
金沢までの道のりも大変だったし、初めての学会発表も満足いけるものだったとは到底思えないが、あまり印象に残っていない。なぜなら、その後の出来事の印象があまりにも強すぎたから。と言っても、一人でデパ地下の食堂で食った治部煮はうまかったし、金沢大に進学した大学のクラブの先輩に金沢市内を案内してもらったし、宿には「pg2_tomato」さんが乱入してくるし、と学会期間中にも色々な想い出はできたのだが。
学会最終日が午前中で終わった後、俺は能登半島一周のソロツーリングに出た。京都を出るときから風邪気味だったのだが、その日も調子はそんなに良くなかった。金沢市内から能登自動車道に入って、その日の内に千里浜なぎさドライブウェイを走った。秋の夕暮れだった。生憎の曇天で夕日は見えなかった。海岸線の砂浜を走るのは爽快ではあったが、その後の道のりのことを考えると、このドライブウェイもひとつのこなすべき一過程のようにしか感じられなくて、そんなに感慨はなく先を急いだ。
熱っぽい体にむち打ってバイクを走らせた。途中で見つけた宿泊案内に寄って宿を予約した。確か七尾の国民宿舎だった様に思う。風邪がひどくなるといけないので飯の後はすぐに布団に入った。熱っぽいぼーっとした頭で寝ながらテレビを見ていたのだが、「欽ちゃんの仮装大賞」やら「ランボー」をやってたような気がする。
早く寝たおかげで体は回復。熱も下がったようだ。道中、共同浴場の温泉があったので入ることに。昼間からこんなところに入りに来ているのは、地元のじいさんばかりだった。温泉に満足して外に出たところで地元のおばあちゃんに声をかけられたっけ。「温かい風呂に入れて良かったね。」って。その言葉がその後、身に染みて感じることになろうとは…
エンジンをかけるため、キックスターターを蹴り始めた頃には雨がポツリポツリと落ちてきた。台風が近づいてきていたのだ。結局それから雨は止むことはなかった。当時はまだ全くのインドア派だったのでゴアテックスなんて知るわけもなく(おそらく知っていても高価で買えなかっただろうが)、生協で買った通学用の安っぽいナイロンのカッパを羽織って走る。荷物の入ったボストンバッグは青いビニール袋に入れてキャリアにくくりつけた。海岸線の奇岩のそばや千枚田の中を通るが、雨の中停まってゆっくりする余裕はない。唯一停まったのは見附島(軍艦島)の辺りだった。秋の冷たい雨に打たれてながら走る。同じ曲が何度も何度も頭の中でリフレインしている。冷える体で輪島への道を急いだ。
輪島での宿はヤングインだったかユースインだったか、そんな名前のところだった。昼は喫茶店、夜はバーという感じの店の二階の安宿。ビジネスホテル風の部屋だが、テレビはロビー、なんて立派なものではなく入り口隣のちょっと広くなったスペースに一台あるのみ。もちろん風呂なんて期待できるはずもない。一階の店舗部分の奥にシャワー室があるのだが、ずっとシャワーからの湯をかぶっていても雨で冷え切った体は一向に暖まることはなかった。夕食は近所の旅館と契約してるらしくそちらの方で食べられた。ちょっと贅沢。俺の他には、その旅館の宿泊客なのだろう、老夫婦が一組のみ。静かな夕食だった。
夕食の後、雨が上がっていたので港の方へ出てみたが、海の方から強い風が吹いていた。台風はどんどん接近してきているらしい。輪島の古い町並みを歩いてみたが、時間が遅いためただ暗い夜道が続くだけだった。
翌朝、また雨が降っていた。昨日の夜と同じ旅館で、同じ老夫婦と一緒に朝食を取った後、朝市見物に出かけた。市は雨が降っていても活気があった。大勢の観光客も傘を手にしながら土産物を物色しているようだ。俺はと言うと、途中の和菓子屋で「ゆべし」を買い、大学のクラブの連中の土産としてナツメの実を買った。でもなぜナツメなんて買ったんだろう?前にクラブBOXに寄ったときに誰かがナツメを食べたことがあるか無いかっていう話をしてたんだっけ?
帰ってからBOXのテーブルにおいておいたナツメは、初めは物珍しさも手伝ってみんな食べていたようだが、あまりにも量が多かったんで放置したままになり結局は捨てたらしい。
朝市を見た後はすぐに能登半島を南下。どうしてもその日の夜に京都の大原に着かないと行けない用事があったのだ。途中、能登金剛の厳門を見に寄る。台風の雨の中、洞窟の奥に続く遊歩道を歩く観光客もおらず、その静まりかえった光景は少々恐怖感を抱かせるようなものだった。俺も結局洞窟は手間で見るだけにしておいた。
前々日通った千里浜のドライブウェイと併走する一般道。海岸と道の間が空き地になっており、何も隔てるものがない箇所がしばらく続いた。海からの強い風でバイクが横倒しになりそうになるのを、必死で体勢を立て直してながら走る。用事さえなければもう1日泊まって台風をやり過ごして帰るのだがそう言うわけにも行かない。ほんと泣きたいぐらいだった。
能登半島を抜け、松任をすぎる頃には雨がますますひどくなる。濡れた路面でブレーキの効きも悪くなってくる。交差点で止まるのも恐い。
そのまま下道で帰っていると、予定の時間には間に合いそうもない。仕方がないので金津インターから北陸道へ。できればバイクで雨の高速は走りたくなかった。しかも乗っているのはデュアルパーパス車。正面からの風圧をもろに受ける。今考えれば良くあんな無茶をしたものだ。
敦賀インターで降りて、朽木から大原に向かう。全然地理がわからずに思いつきで決めたルートだったが、今思うと割と良いルートだったんじゃないだろうか。だが、回りは既にもう暗い。両側が林になっている山道はその時間には自動車もほとんど通らない。自分のバイクのヘッドランプが無ければ全くの暗闇の世界だ。疲れた体にこの暗闇は堪える。心も疲れていた。本能にすり込まれた暗闇に対する恐怖感を何とか抑え込みながら、ワインディングする道を走った。
そのうち集落の明かりが見えるようになってきた。やっと心に余裕が出てくる。大原への道のりもあと少し。しばらく人家が両脇にある道を走ると程なく「大原の里」に着いて、台風の中のバイクの長旅は終わった。
今回、氷見の海鮮館で買ったホタルイカ
2005年4月の千里浜なぎさドライブウェイは曇り空だったが、思ったより開放感があって走っていて楽しかった。あの時のような悲壮感も義務感もなかったし、なんせ車でのドライブだったから。
帰り道あの横風に倒されそうになった道を通った。はっきり覚えていた。よほど辛かったんだろうな。
そうそう、その前の週は金沢の長流さんの家に泊めてもらって金沢観光もしてたんだった。そのレポートも書かなきゃな。
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